梅雨入り直前。当初の予報がいい方向に外れて、この2日間だけ爽やかに晴れ渡った埼玉県狭山市の西武新宿線 狭山市駅西口市民広場。クラフトビールのフェスのはずなのに、目の前で多くの子どもたちが駆け回って遊んでいます。
2026年6月5日・6日、クラフトビールのフェス「CHILDhood DREAM」が開催されました。今回は主催者であるNPO法人フロム・ザ・スリードット代表の松田陸氏に、この一見不思議なコンセプトのフェスについて聞きました。
なお、サインアーテックは「どこでもバナー®」「POPコーン®」などで協賛させていただきました。

夜遅くまで子どもたちが遊んでも、家族と一緒だから安心!
本記事はインタビューの書き起こしをもとに、読みやすい形に整えています。
目次(Table of Contents)
すべては「キッズの乾杯」から始まった

協賛品のフォトプロップス(厚さ7mmのスチレンボード製)を片手に親子で思い出づくり!
閉幕直前、いちばん印象に残った瞬間
株式会社サインアーテック(以下、SA):
今年のフェスを振り返ってみて、一番印象に残っている瞬間はどこでしょうか?
NPO法人フロム・ザ・スリードット 松田陸氏(以下、松田氏):
最終日のフェス閉幕直前の「乾杯タイム」ですね。今回、ビールの原料からつくるノンアルコールビールのワークショップを開催して、子どもたちにも仕込みから参加してもらったんです。それをオリジナルカップに注いで、「キッズと大人がみんなで乾杯する——」。この乾杯が、私が一番実現したかった瞬間でした。
SA:「CHILDhood DREAM」というイベント名には、最初からその光景が込められていたのですね。
松田氏:そうなんです!大人が乾杯している光景って、子どものときに憧れた人も結構いたのではないでしょうか。それを私のイベントで叶えようと。
子どもには夢を、大人には「自分にもあんな時代があったなあ…」と懐かしく振り返るひとときを。子ども目線でも、大人目線でも楽しめる夢の空間——。それが、このイベントを始めたきっかけでした。

左が昨年、右が今年のポスター。今年のテーマは、“子どもが大人を連れてくる”
変わったのは街ではなく、自分の視点だった
「何もない」から始まった、地元との向き合い方
SA:松田さんが子どもの頃は、この街はどんな風に見えていましたか?
松田氏:正直、13、14歳の頃の私には、この街の面白さがまだ見えていなかったんです。「何もない」と思っていました。地元って、近すぎて見えないものなんですよね。
SA:地元に向き合うようになったキッカケは何だったのでしょう?
松田氏:18歳のときに、インドのニューデリーで広告のインターンに参加したんです。
その時に、インドの方々から「日本や地元について教えてくれ」と言われたときに満足いくように伝えられず、そこから日本に目を向けて文化を学んだり、国内を回ったりなど様々な活動をしていました。

フロム・ザ・スリードット代表 松田陸氏
様々な経験を経て、もっと自分事で落とし込みたいと思い、地元に目を向けるようになりました。
思い返すと、幼いころから「地元の商店街がもっと人を集めるにはどうしたらよいか」など、よく母と話していて、まちに入り込める仕事は何かと考えて狭山市役所に入ることを決めました。
SA:入庁当時は、どんな思いを抱いていましたか?
松田氏:面接でお話したのは、「若者が誇れる地元にしたい」という気持ちでした。実際に地元のコミュニティへどんどん入っていくと、この街に思いを持って活動している人、「実はこう思ってるんだよね」という方が次々に見えてきました。
13、14歳の頃に見えていた狭山と、今の狭山の景色は全然違って見えます。
市役所を退職した今は、「自分なりの解釈で、自分が描きたい地図で、狭山市民をどう沸かしていくか」—— といったことを考えています。周りにいる仲間と一緒に走り出したところです。
街の玄関口を、夢の舞台に
「狭山『で』乾杯」——「で」に込めた意味
SA:今回初めて訪れてみて、狭山市駅西口広場は良いロケーションだなと感じました。
松田氏:街の玄関口ですからね。この見慣れた風景に、新しい景色を付け加えたいと思いました。このイベントを皮切りに、「あの場所雰囲気良くなったね~」と感じていただければ —— そんな気持ちで始めました。
SA:コンセプトの中心にある「狭山で」について教えてください。
松田氏:SNSのハッシュタグも「#狭山で乾杯」ですが、一番大事にしていることは「狭山で開催する」ことなんです。一緒に企画・運営する仲間は狭山エリアだけにこだわっているわけではありません。キャンドルアーティストの森本恵さんは所沢から、流木アーティストの流木MARUさんは川越から参加されています。狭山に思いのある周辺の皆さんが集まって、「狭山で」イベントを開催する。
狭山の人だけで間口を閉じてしまうと、どうしても内輪の空間になってしまう傾向があります。外から人が集まってくるからこそ、「狭山という街がいま動いてるんだ」という空気を伝えられると思っています。

1時間ごとに行われた乾杯タイム。グラスが上がるたび、広場内に声が広がる
SA:会場の入口まわりでは、記念撮影をしている方も多く見かけました。
松田氏:そうなんですよ。どこでもバナーの前で、結構みなさん一緒に写真を撮っていただいてました。あと、フォトプロップスもこういった思い出作りには欠かせないですよね!
お手本はポートランド。フードもビールも主役に
フードを「サブ」にしなかった理由

SA:ビアフェスなのに、フードの出店が充実していると感じました。
松田氏:ビアフェスって、ビールが主役でフードはサブ、といった印象があって。ごはんが美味しくなければ子どもが「行きたい!」とはならないだろうし、親御さんもそれでは困りますよね。だからフードにもビールと同様に主役を担ってもらっています。
このイベントでは出店者を公募していません。「ここは絶対に美味い」と信頼できるところに、私の方からお声がけしています。
今回は13店舗に出ていただきましたが、そのうち去年も出ていたのは3店舗だけ。残りの10店舗は初出店です。まるで細胞が入れ替わるように、フェスを重ねるごとに新しく生まれ変わっていくイメージですね。

学んだのは、ビールより「街のつくり」
SA:ビアフェス開催のきっかけは、米国オレゴン州のポートランドとお聞きしました。
松田氏:はい。ポートランドはクラフトビールの聖地とよく言われる街です。元々はポートランドのまちづくりを学んだのがきっかけで、そこからクラフトビールにも興味を持ち始めました。
私がお手本にしたのは、クラフトビールそのものより街への向き合い方ですかね。
ローカルファーストや、「自分たちの街は自分たちでつくる」という考えの下(もと)、市民が能動的に街づくりに参加するといったあり方がすごくいいなと。
そこから「狭山でイケてるビアフェスをやること」や「我々市民の手とアイデアで狭山を盛り上げていく」という考えのベースにつながっていきました。
まぁ、ポートランドにはまだ行ったことはないんですけどね(笑)。
SA:ポートランドには「Keep Portland Weird」※1という合言葉があるそうですね。あれは州政府などの行政側で掲げたスローガンなのですか?
松田氏:いや、それが違うんです。行政ではなく、街の住人が自主的に掲げた合言葉なんです。「変わり者であり続けよう」って(笑)。
みんながそれを見るから、「じゃあ自分もチャレンジしてみよう!」という人が集まってくる。クラフトビールって、自己表現だし、クリエイティブだし、アートでもあると感じますね。
【脚注】
-
- Keep Portland Weird
- 米国オレゴン州ポートランドの非公式スローガン。「変わり者であり続けよう」の意。行政が定めたものではない。2000年代初頭、大手チェーンの進出に押される地元の小さな店を応援しようと、街のレコード店の店主が配ったステッカーが原点とされる。
夜の帳が下りてきた

日が落ちた後、日中とは異なる表情を見せはじめる西口広場。
3つの偶然が、重なって生まれたご縁
SA:日が落ちてからの空間が幻想的で圧巻でした。
松田氏:森本さんのキャンドルと、流木MARUさんのインスタレーションです。そこに御社のPOPコーンを加えた布陣ですね。キャンドルと同じくらいの光量でバランスが良くて、空間に溶け込んでいたんですよね。子どもたちが灯りのそばでずっと遊んでいました。
SA:今回の空間装飾を担当されたお二人とは、どんなご縁でつながったのでしょうか?
松田氏:森本さんとは、友達伝いに呼ばれた音楽イベントで知り合いました。そこでキャンドルの装飾をしていたのが森本さんでした。
しかも、以前の私の勤務先の敷地内に、森本さんが手がけるブランド(Kivi candle)が入っていたんですよ。
ほかにも私が足を運んだ様々なイベントで装飾をされていて、偶然が重なってそこから仲良くなっていきましたね。
流木 MARUさんも森本さんからの紹介で今回から初参加していただいたのですが、すぐ仲良くなりました(笑)

日中と夜間ではこんなにも表情が変化します(昼と夜とでは若干レイアウトを変えているようです)。
SA:人が思わず楽しくなってしまう空間づくり、そのこだわりはどこで培われたのでしょうか?
松田氏:学生時代のIKEAでのバイトですね。人が思わず楽しく動いてしまう設計を、働きながら肌で感じていました。ただ並んで食べて帰るだけのイベントにはしたくない。「お客さんがここに来て何を思ってほしいのか」を設計するのが、私の仕事だと思っています
そして、ふたたび —— #狭山で乾杯
量より質で。居心地づくりは続く
SA:ある来場者の方に「年12回やってほしい」なんて言われてましたね(笑)。
松田氏:昨年は「2ヶ月に1回やって」と言われていたので、年6回でも多いなと思っていたんですが、その倍ですね(笑)。
でも、回数を増やすと、毎回同じもの(マンネリ)になっていってしまう恐れがあります。量よりは質で育てていきたい。この哲学はずっと変わることはないと思います。
SA:最後に。もし来年の構想があれば、少しだけお聞かせ願えませんでしょうか?
松田氏:今年も良かったですけど、さらに居心地のいい空間をつくりたいですね。テーブルや椅子、景観も含めて、お客さんが「ここにいたい」と思える場所にするつもりです!
取材後記

イベントの規模は、前回からおよそ倍に育ったそうです。それでも松田氏は「量じゃなくて、質で育てていきたい」と繰り返します。
先日取材したイベント「ナマステ飯能カレー祭り」でも、飯能・日高・入間・狭山・川越・秩父と、地域の熱が、線のように近隣エリアへ広がっていくといったお話を聞いたばかりです。
今回のイベントでも、所沢や川越から集まった仲間たちと「狭山で」乾杯するという光景に出会い、その線が確かにつながりつつあることを感じました。地域の賑わいを形づくる一つのピースとして、当社もその線上にいられたら幸いです。
狭山で作って、狭山の中心で乾杯する —— ポートランドのストーリーも最初はこのような感じだったのかもしれませんね。来年の構想がどうなったのか、また機会があれば伺ってみたいと思います。
- 取材協力・写真提供:
- NPO法人フロム・ザ・スリードット(撮影:西村 悠友) ※一部当社撮影
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- 「夜の屋外イベントで、導線をスムーズに、魅力的に演出したい」
- 「何度でも再利用可能な、イベントのフォトスポットを手軽に設置したい」
など、イベントに関するアイデアをお探しでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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