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体験型現代美術館「ハイパーミュージアム飯能」のこれから

夕闇が迫るハイパーミュージアム飯能正面階段と、「たかくらかずき展」のために設置された大鳥居

夕闇が迫るハイパーミュージアム飯能正面階段と、「たかくらかずき展」のために設置された大鳥居

埼玉県飯能市・メッツァビレッジ内の体験型現代美術館「ハイパーミュージアム飯能」。森と湖の環境を活かし、展示空間と屋外の体験とが交差する場として、開館からまもなく1年が経過します。

今回は、日頃より大変お世話になっております(株)メッツァ取締役 東風康行(こち やすゆき)様に、開館の経緯、自然×デジタルの考え方、地域連携と制作の裏側、そして「館のファン」づくりの展望について伺います。

※本記事はインタビューの書き起こしをもとに、読みやすい形に整えています。

坂道の先で出会う、ハイパーミュージアム飯能

森と湖に囲まれた「メッツァビレッジ」へ向かう長い坂道を降りていくと、左手に「ハイパーミュージアム飯能」が見えてきます。

多くの方が思い描く「北欧らしさ」とは少し違う、摩訶不思議な空気をまとったこの一角。予備知識なしに訪れると、「この建物は一体なんだろう?」と興味をそそられ、思わず足を止めた方もいるかもしれません。

広大なビレッジ散策の途中に、ふらっと立ち寄れる距離感もこのミュージアムの魅力のひとつです。

では、この場所はどんな背景から生まれ、いま何を目指しているのでしょうか——
ミュージアムの運営を担う東風氏の言葉からたどります。

開業当初からの構想と、美術館立ち上げの経緯

メッツァにおけるミュージアムの位置づけ

(株)サインアーテック(以下SA):
本日はありがとうございます。
メッツァといえば、飯能・日高エリアの多くの方にとっては、一度は訪れたことのある癒しスポット・テーマパークですね。まずはメッツァさんとムーミンバレーパークさんの関係性について簡単にご紹介いただけますでしょうか。

(株)メッツァ取締役 東風 康行(こち やすゆき) さん(以下東風氏):
そうですね。まず「メッツァ」という全体のグランドコンセプトがあって、その中に「メッツァビレッジ」と「ムーミンバレーパーク」が共存しています。この「ハイパーミュージアム飯能」は、メッツァビレッジ側の魅力を高める施設として開館しました。

各施設への最初の分岐点に位置するハイパーミュージアム飯能(右)。左はマーケットホール

各施設への最初の分岐点に位置するハイパーミュージアム飯能(右)。左はマーケットホール

SA:元々インフォメーション棟兼事務所として使われていた建物を増設・改装、美術館にアップデートされたようですね。今回のミュージアム開館にあたっての経緯と、この建物を選ばれた理由を教えてください。

東風氏:実は、開業当初から美術館を作りたいっていう意向はあったのです。計画はいろいろと紆余曲折しましたが、元々そういうコンセプトがありました。ところが、コロナ禍になってしまったこともあり一度ペンディングになっていました。パンデミックが収束に向かいつつあった中で、「あらためてやりたいよね」となったわけです。

(メッツァビレッジ敷地内において)適切な場所として、ご来場者さまが最も立ち寄りやすい位置を考えた時に、インフォメーション棟を改装するのが最も適していると判断しました。

自然と芸術が触れ合う北欧文化

SA:「美術館」という発想と、森や湖といった「自然」の要素は、どう位置づけていますか。

メッツァビレッジのシンボルロゴを連想してしまう、遊び心のあるベンチ

メッツァビレッジのシンボルロゴを連想してしまう、遊び心のあるベンチ

東風氏:北欧ってすごく芸術が身近なんですよ。例えば、公園に行っても世界的に有名な彫刻家の作品があったりとかします。フィンランドに限らず、ノルウェーなど他の国々も暮らしのすぐそばにアートがある感覚で、庭先に置かれているような作品も見かけたりします。

芝生の上の作品とか、自然と芸術に触れ合うのも北欧の一つの文化としてあるので、そういったところもうまく表現していきたいなというのもありました。

「ハイパーミュージアム飯能」を拠点として、森や湖といった現地の要素がここに存在しているということは、常々意識して運営しています。

「ハイパー」の意味するところ ── 誰もが入りたくなる現代美術館

出展アーティスト選定の軸

SA:展示の方向性について伺いたいです。現在、展示会開催中のたかくらかずき※1さんは、開館以来3人目のアーティストさんですが、「ハイパー」というコンセプトは、企画やアーティストさんの選定にどのように反映されているのでしょうか。

メッツァの森の木漏れ日が、たかくらかずき氏のアート作品を通して柔らかく差し込む

メッツァの森の木漏れ日が、たかくらかずき氏のアート作品を通して柔らかく差し込む

東風氏:元々ハイパーっていうコンセプト自体は、広く多くの人に芸術を楽しんでいただきたいというところから来ています。ですから、キャッチーなモチーフのキャラクターというのも一つの選定要素ですし、ご来場者さまが(そのアーティストのことを)知らなくても入ってみたくなるようなキャッチーなアーティストさんである、というのも重要な選定要素です。

初めて作品に触れる小学生でも、「芸術に触れる」っていうところが提供できていれば、ハイパーミュージアムたる価値は提供できているのかなと思っています。

今後、展示をお願いする方も、例えばデジタル領域の中でもNFTを軸に表現している方とか、キャラクター的にキャッチーなアイコンをお持ちの方とか、そういった芸術家を中心に組み立てることで、ミュージアムとしてのコンセプトもどんどん固まっていくんじゃないかと考えています。

お祭りキャラとARゲームが融合する、摩訶不思議なハイパー空間

お祭りキャラとARゲームが融合する、摩訶不思議なハイパー空間

「自然×デジタル」を展示づくりに落とし込む

SA:実際の展示づくりでは、この「コンセプト」について、どう意識されていますか。

東風氏:元々のコンセプトは「自然とデジタル」です。自然の中でのインスタレーションや、自然を感じさせるコンセプトの作品などに現代的なデジタルの要素をどれだけ入れられるかを意識しています。遊び方一つとってもそうです。今回の「たかくらかずき展|キャラクターはことば」ではARで遊べます※2し、あのような取り組みはデジタルだからこそ可能なことです。

デジタル空間のアートですら、現代アートの解釈で言えば芸術として認識され、認められる世界になっています。そういった先進性は、展示づくりにも多く取り入れていきたいと考えています。

【脚注】

  1. たかくらかずき
    1987年生まれの現代美術アーティスト。ビデオゲーム/ピクセルアート/VR・AIなどデジタル表現を用い、仏教など東洋思想を参照しながら「キャラクター」を軸に作品を制作している。公式サイト:Takakurakazuki
  2. ARで遊べます
    会場内(屋外も)にある仕掛けをスマホで読み取ると、ARでキャラクターが現れたり、作品世界を“ちょっと遊べる”体験が用意されています。メッツァ公式(展示会詳細): たかくらかずき展|キャラクターはことば

「なんだこれ??」── 違和感からはじまる好奇心

北欧のライフスタイルにアートを掛け合わせると?

SA:「たかくらかずき展」では、お客さま参加型の取り組みもあったようですね。なんとアーティストさん自らが作詞を担当した盆踊りソング※3が流れると伺いました。

東風氏:その場にたまたまいる人に声かけて、「一緒に踊りましょう!!」って形でやるのですけど、50人ぐらい参加していただきました。あるお子さまには「この曲はどこで買えるんですか?」って聞かれるぐらいでしたよ(笑)。実際に体験すると伝わるのですが、知っていただける人数をどのように増やしていくかというのが、ハイパーミュージアム側のミッションだと思っています。

従来、ここメッツァビレッジは北欧の商業施設として、また、北欧のライフスタイルを体験できる施設として、ショップや飲食、スポットの各種イベントを中心に展開しています。そこにアートっていう要素が加わることで、施設の表現の幅が広がりますし、そこで興味を持っていただければ、お客さまの層も広がると考えています。

北欧文化に大鳥居!? 違和感をつくる絶妙なバランス

SA:北欧の雰囲気の場所に(ミュージアム正面に設置中の)大きな鳥居が現れたので驚きました。

東風氏:先ほど申し上げた、「北欧の文化圏でのアートの在り方」といった視点で考えると、「身近にアートを感じさせる空間を作る」っていう点では、コンセプトからズレているかといえば、絶妙に、ズレてはいないんじゃないかなと思います。

逆に北欧文化に寄せすぎてしまうと、今度は「芸術を広く楽しんでいただく」っていうところから少しズレちゃうのかな…?

会場中央に鎮座する守護神「ハイパーマン」

会場中央に鎮座する守護神「ハイパーマン」

今後は北欧の要素が入っているアーティストさんも模索したいとは思っていますが、あまりにも(北欧文化としてのメッツァビレッジへ)寄せすぎると、ミュージアムとしての個性が薄れてしまう可能性もあると思っています。

あとは、違和感という名の「注目度を上げる」というのも大切かと。「なんだこれ?」って注目されるのが大事で。ヤノベケンジ※4さんの猫BIG CAT BANG※5も、「なんだあのデカい猫は??」っていう感覚ですね。

SA:湖上の「小島」の仕掛けも、かなり驚きがありました。あれはどういった経緯で設置されたのですか?

東風氏:あれは元々ヤノベさんのアイデアがキッカケになっています。ここでハイパーミュージアムのオープニング企画展をやることが決まった時に、是非やらせてほしいって頼まれたのが、湖の上に猫の宇宙船が不時着してる姿です。

最初は「ブッ飛びすぎ!!」って思いましたが、お話するうちに現実になりました。この小島は、展覧会に合わせて使う場合と使わない場合がありますけどね。

この体験型小島の企画は、オープニング展「宇宙猫の秘密の島」からはじまった(船で上陸が可能)

この体験型小島の企画は、オープニング展「宇宙猫の秘密の島」からはじまった(船で上陸が可能)

【脚注】

  1. 盆踊りソング
    会期関連イベントで、展示空間で流れる盆踊り楽曲「ハイパーゼロイチ音頭」に合わせて踊るワークショップを実施。楽曲の作詞を、出展作家のたかくらかずき氏が担当している。メッツァ公式(お知らせ):お正月は音頭&ハイパー神事
  2. ヤノベケンジ
    巨大彫刻や機械彫刻などで知られる現代美術作家。旅の守り神「SHIP’S CAT(船乗り猫)」シリーズを継続制作し、国内外の各地で作品を展開している。公式サイト:ヤノベケンジ「宇宙猫の秘密の島」公式YouTubeチャンネル:SHIP'S CAT ISLAND
  3. BIG CAT BANG
    ヤノベケンジ氏による作品名。GINZA SIXの吹き抜け空間で発表されたインスタレーションで、「SHIP’S CAT」シリーズの系譜に連なる“宇宙猫”の物語世界を大規模に展開した。お知らせ(GINZA SIX 公式|2024年4月):新作吹き抜けアート「BIG CAT BANG」

地域とともに作る ── みんなから選ばれる美術館として

子どもたちに芸術への入口を

SA:メッツァビレッジは、ここ飯能・日高エリアにある様々な企業・団体との強い連携という点も印象があります。どのような形で進めているのでしょうか。

東風氏:今までずっと飯能市教育委員会さんなど、多くの企業さん、団体さんにご協力をいただいていて、例えばチラシにお子さま用の無料券をつけて配っていただいています。

せっかく拠点としての美術館を作ったのであれば、地域のこれからの世代の方たちに芸術を感じてほしい。こういった連携は結構強くやらせていただいています。

制作・施工も「地域密着」で

各種サインや展示用の床面・壁面・ウィンドウ面のシート印刷などは、引き続き継続してお願いしていますし、施工業者さん、大工さんも含めて、エリアの業者の方々に多大なるご協力をいただきながら作っているので、結果として地域密着の形になっています。

「地元で面白いことができそう」っていうモチベーションで、結構おつながりいただいていることが多いですね。

用意しておいた透明シートが手際よく窓に貼り込まれ、新たな空間が生み出されていく

用意しておいた透明シートが手際よく窓に貼り込まれ、新たな空間が生み出されていく

言ってみればお祭りじゃないですか。準備期間のワクワク感みたいなところっていうのは、毎回毎回発生しますし、結構ハイテンションでやらせていただいてますよ。

SA:まさに祝祭だなと感じました。日本に古来よりあったお祭りの空気感というか…
今回の展示のようにデジタルを主体とした表現がある一方で、壁や床に貼る装飾も、やはり必要なものでしょうか?

東風氏:やっぱり最後に空間を印象づけるのは、現実にこう壁に貼ってあるもの、床に貼ってあるものっていうのはあります。視認性は上がりますよね。

インタラクティブに動く表現の良さみたいなところは、もちろんデジタル固有の強みだと思うのですが、やっぱり物理的な出力物ではないので存在感としては薄さもあります。

刻一刻と移ろいゆくデジタル表現と印刷された現物とが融合し、ハイパーな空間を生み出している

刻一刻と移ろいゆくデジタル表現と印刷された現物とが融合し、ハイパーな空間を生み出している

そういう意味では、やっぱり最後に空間のインパクトを決めるのは、デジタル表現と印刷された床面や壁面のシートとの"共存"だと感じます。

SA:ありがとうございます。このような取り組みについて発信できるのも、まるで「お祭り」に参加させていただいているかのように感じられます。

これからの展望 ── 「館のファン」を育てたい

さて、今後の活動として、中長期的にはどのような絵を描いてらっしゃるのかお聞かせ願えませんか?

東風氏:やっぱりアーティストさんたちに選ばれる館になりたいなという目標があるんですよね。ずっと面白いことを続けることによって…。現状では、開業からまだ一年も経っていないのですが、どの美術館も何十年って単位で運営されている中で、アーティストさんにとっても美術館のイメージで、やるやらないとか、やりたいやりたくないみたいなことが決まってくるのだろうと思います。

今は決して大きい場所ではないのですが、ココが表現の場所としてすごく面白いことができると、アーティストさん側から興味を持っていただけるような空間になることが、施設としてのステータスアップの目標です。

「アーティストさんとお客さんの両方にファンになっていただければ」と語るメッツァ取締役 東風様

「アーティストさんとお客さんの両方にファンになっていただければ」と語るメッツァ取締役 東風様

もう一つは、やっぱり近隣の地域の方にもっと来ていただきたいですね。次の新しい展覧会が始まったから行ってみようよって思われるような。テーマパークもそうじゃないですか。季節ごとの催事でお客さんがまた戻ってきたり。

アーティストさん目当てのファンの方にこの館を体験していただく。その中でこの館のファンになっていただける方をどれだけ醸成できるか?

そのような試みを継続していくことによって、美術館自体にお客さまがつくような活動をしていくということが重要かなと思っています。

取材協力:
株式会社メッツァ
https://metsa-hanno.com/metsa/

取材後記

いかがでしたでしょうか?
「ハイパーミュージアム飯能」さんが未来へ向けて提供する「自然×デジタル」の新しいアートの表現を楽しみにしています!

このブログが公開される頃には、次の新しい展示会の告知がされているでしょう。
「まだメッツァには一回も行けてない、、」、「ミュージアムの前は通ったけど、まだ入ったことはない、、」といった方も、次の週末に一度訪れてみてはいかがでしょうか?

日常とは異なる、何か新しい発見があるかもしれませんよ!

広報より:地域とともに

ムーミンバレーパーク オフィシャルサポーター のロゴ

この度、当社は「ムーミンバレーパーク」のオフィシャル・サポーターに就任いたしました。今回取材させていただいた「ハイパーミュージアム飯能」様ならびにメッツァ様、そしてこの飯能・日高エリアの魅力を発信するべく、微力ながらお力になれればと思いますのでお楽しみに!

オフィシャル・サポーターについては、こちらのお知らせをご覧ください。

現地へのアクセス

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住所 〒357-0001 埼玉県飯能市宮沢327-6 メッツァ
電車 西武池袋線 飯能駅北口
1番乗り場よりバスで13分
「メッツァ」行き直行バス(国際興業・西武バス・イーグルバス運行)
または「宮沢」行き路線バス(イーグルバス運行)に乗車
メッツァ停留所で下車
その他

普通乗用車駐車場

  • 平面駐車場P1:高さ2.4m 幅2.2m 長さ6m 未満
  • 立体駐車場P2:高さ2.1m 幅2.2m 長さ6m 未満
  • 料金:平日1,000円/日 土日祝1,500円/日

※平日は2時間まで駐車場料金は無料 ※予約不可、現地精算となります。

大型車(バス)駐車場

  • 高さ2.4m 幅2.2m 長さ6m 以上
  • 料金:平日・土日祝3,000円/税込

※大型車は予約必須です

オートバイ・原動機付自転車、自転車駐輪場

  • オートバイ:収容台数:30台 自転車駐輪場:95台
  • 併設された駐車場を予約なしでご利用いただけます。
  • 無料でご利用いただけます。

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