展示パネルとは厚みのある印刷物のことで、展示物の説明や広告、商品説明やPRを印刷して使用されます。
同じような用途で使用されるパネルには、キャプションやPOPがあります。
使用場所はさまざまで、飲食店やアパレルなどの店舗、イベント・展示会のブース、美術館の文化施設など幅広く使用されます。
身近に使われている展示パネルですが、いざ印刷して制作すると失敗してしまうケースも多いものです。
たとえば展示パネルの素材ですが、代表的なものに「スチレンボード」 があります。
安価で軽量なカットしやすい素材であることから展示パネルの定番素材となっていますが、どんな展示パネルにも適しているわけではありません。
スチレンボードはポリスチレンを主原料とした板です。わかりやすい例にすると、発泡スチロールの粒子をさらに細かくし、高密度に加工したものとなります。
発泡スチロールは基本的に屋内で使用されるものですよね。
スチレンボードも同様に、基本的には屋内での使用が望ましいとされています。(短期イベントなどでは屋外で使用しているパターンもありますが…)
また、スチレンボードは湿気や衝撃に弱いのも特徴です。
湿気の多い場所や梅雨時期などで使用すると、スチレンボードが反ってしまい見栄えが悪くなり、壁面などに貼りつけて設置していた場合には落下してしまう場合もあります。
私の失敗例になりますが、むかしスチレンボードで制作した展示パネルを落としてしまい、角がつぶれてしまったことがありました。
一度つぶれてしまった角は元に戻すことはできないので、当然すべて印刷しなおして再制作となってしまい、納期やコストも必要以上にかかってしまいました…。
当時はスチレンボードしか知らずに展示パネルの印刷をしていましたが、実は展示パネルに使われる素材は他にもあります。
それでは、展示パネルにはどのような素材があるのでしょうか?
素材以外にも印刷方法やサイズ、厚みなど、展示パネルの印刷をする前に知っておきたいことをご紹介していきます。
初めて展示パネルの印刷をする方はもちろん、展示パネルの印刷で失敗したくない方もぜひ参考にしてみてください。
それではみていきましょう。
◎スチレンボード
展示パネルの印刷に使われる代表的な素材です。
スチレンボードはポリスチレンを主原料とした板で、わかりやすい例にすると、発泡スチロールの粒子をさらに細かくし、高密度に加工したものとなります。
安価で軽量な上、カッターで容易にカットもしやすい点から、展示パネルのほか店頭のPOPや等身大パネルでも使用されています。
印刷業界や販促業界では「スチレン」「ドライマウント」 「ハレパネ」また単に「パネル」とも呼ばれ幅広く活用されていますが、衝撃には弱く、湿気で反ることもあるため注意が必要です。
スチレンボードには大きく分けて3種類あります。
・素板(そいた)→素材そのままのパネル(紙が貼られていない状態の物)
・糊付きパネル→片面もしくは両面に糊付きのパネル
・糊無しパネル→表裏に紙が貼られているパネル
展示パネルでは主に糊付きパネルと糊無しパネルが使用されます。
糊無しパネルには直接印刷をし、糊付きパネルは印刷した紙を貼りつけて加工したものを使用します。
スチレンボードのサイズ展開はサブロクと呼ばれる900mm×1800mmのほか、A判B判規格、L判規格など豊富なラインナップになっていて、色は基本的に白となりますが、黒も流通しています。
◎ゲーターフォーム
ゲーターフォームはスチレンボードの主原料と同じポリスチレンで作られていますが、表面に特殊コート(ラクセル面)が採用されていて、スチレンボードと比較すると耐久性に優れたボードになります。
特に平面性の維持には優れていて、長期間の使用でも反りが少ないことから、展示パネルを何度も使いまわすときや常設など長期に使用する場合に使用されています。
ただし、スチレンボードのようにカッターで容易にカットすることは困難となります。
ゲーターフォームは、「ゲータ」や「ゲータボード」と呼ばれる場合もあります。
ゲーターフォームには片面に糊が付いたタイプと、糊なしの2種類があります。
サイズ展開はシハチと呼ばれる1200x2400mmサイズのほか、1500mm×3000mmの大判などもあり、色は白と黒があります。
◎アルミ複合板
アルミ複合板は、発泡ポリエチレン樹脂をアルミニウムでサンドしたパネルボードです。
軽量な上、反りにくく強度も高いため、展示パネルのほか看板の下地や化粧板としても使用されています。
特に屋外で使用する展示パネルのほとんどはアルミ複合板となります。
こちらもスチレンボードのように容易にカットすることは困難となりますので、注意しましょう。
アルミ複合板は、「アルポリ」や「アルポリック®(三菱ケミカルの登録商標)」と呼ばれる場合もあります 。
アルミ複合板にはスチレンボードやゲーターフォームのように糊付きタイプはなく、印刷した糊付き塩ビシートを貼るか、ダイレクト印刷を使用して直接印刷して使用されます。
ダイレクト印刷については、このあとの「【4】展示パネルの制作方法」にてご紹介します。
サイズ展開はサブロク(900mm×1800mm)のほかメーター板(1000mm×2000mm)、シハチ(1200mm×2400mm)、1200mm×3000mmなどの大判もあります。
色は基本的に白となりますが、シルバーや黒もあります。
素材 | スチレンボード | ゲーターフォーム | アルミ複合板 |
厚み | 5mm/7mm | 5mm/7mm/13mm | 3mm |
展示パネルの印刷で、最も多く使用されるのがスチレンボードの7mmとなります。
また、これらのサイズは一般的に使用されるもので、厳密には他の厚みもあります。
【3】展示パネルのサイズ
展示パネルの印刷は自由なサイズで制作することができますが、一般的にはA版とB版の規格サイズが多くみられます。
A版は国際標準規格ISOで定められた規格となります。B版はJIS(日本工業規格)で定められた規格で日本独自の規格とるため、海外では通用しないので注意しましょう。
各規格サイズの展示パネルの活用例をご紹介します。
サイズ | 寸法(mm) | 使用例 |
B0 | 1030×1456 |
規格サイズの中で最も大きなサイズとなります。 遠目でも見やすい展示パネルとなり、駅構内の広告や店舗の背景などに適しています。 |
A0 | 841×1189 |
A版のなかで最も大きなサイズとなるため、海外の展示会ブースやイベントでもよく使用されるサイズとなります。 文字ばかりを載せるよりは、写真や画像も取り入れた製品の説明や解説、広告などに適しています。 |
B1 | 728×1030 |
縦型のポスターの一般的なサイズです。文字や写真を入れて、広告やキャンペーン、解説などに活用されます。 フレームやスタンドを使用して、自立した展示パネルとして使用されることもあります。 |
A1 | 594×841 |
展示パネルのなかで最も人気のあるサイズとなります。 大きすぎないため屋内で使用しても圧迫感を感じることが少なく、かといって小さすぎることもないため適度な情報量を入れ込むことができる使いやすいサイズです。 専用のフレームやスタンドも多く、汎用性も高くなります。 |
B2 | 515×728 |
小さめのポスターに使用されるサイズで、展示パネルとしては屋内利用によく使用されています。 近場で見るには使いやすいサイズですが、遠目で見るためには文字や写真などのバランスに気を付ける必要があります。 |
A2 | 420×594 |
ご紹介するなかで最も小さなサイズとなります。 圧迫感が少ないため、小さめの店舗や展示会ブースで使用する場合などに適しています。 |
A2より小さな展示パネルの印刷も可能ですが、文字や画像が見にくくなってしまうため、あまり採用されることはありません。
また、小さめのパネルは「キャプション」や「POP」といった呼ばれることが多く、印刷内容も展示パネルより簡素化されたものが多くみられます。
【4】展示パネルの制作方法
展示パネルの制作方法は主に2種類あります。
まずご紹介するのが、紙に印刷をしてパネルに貼りこむ「マウント方法」です。
スチレンボードやゲーターフォームの場合には、ボード自体に糊が付いている「糊付きタイプ」を使用しますが、 アルミ複合板には糊付きタイプがないため、印刷時に糊付きのシートを使用して貼りこみます。
いずれの場合も、貼りこむ作業で印刷面に傷がつかないようにラミネート加工をするのがおすすめです。
次にご紹介するのが「ダイレクト印刷」と呼ばれる方法です。
ダイレクト印刷では、印刷と同時にLEDによって瞬時に硬化するUVインクが使用されるため、パネル素材に直接印刷することが可能となります。
マウント方法のような貼りこみの手間がなくなり、納期やコストの削減も可能となりますがラミネート加工は推奨されていません。
展示パネルの印刷は、従来ではマウント方法が主流でしたが、近年ではダイレクト印刷も多く取り入れられるようになってきました。
しかし、ダイレクト印刷は専用の機械を導入している会社が少ないため、まだ一般的な制作方法とは呼べません。
当社では大型の展示パネルも印刷できるダイレクト印刷が可能となりますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。
コチラのページでもご紹介しています。

ダイレクト印刷の様子
【5】展示パネルの印刷には注意しよう
展示パネルで注意したい点は、用途による素材えらびです。
使用場所が屋外の場合は、耐久性の面からアルミ複合板以外の使用は避けるのが良いでしょう。
1日などの短期イベントではコスト面からスチレンボードが使われることもありますが、数日も使用すればかなり劣化してしまいます。
では屋内であればスチレンボードで良いかというと、そうでもありません。
スチレンボードは湿気に弱いため、屋内であっても長期間の使用では反りが出てきます。
屋内で長期間の使用には、ゲーターフォームかアルミ複合板がおすすめです。
まとめ
- 展示パネルの印刷に使われる素材は「スチレンボード」「ゲーターフォーム」「アルミ複合板」がある。
- 展示パネルのサイズは自由に制作できるが、一般的にはA版とB版の規格サイズが採用されている。
- 展示パネルの制作にはマウント方法とダイレクト印刷の2種類があり、それぞれメリットデメリットがある。
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